少年よ、雨を歩け
少年よ、雨を歩け。
手には傘を持たず、右手にペンを、左手には紙を持て。
雲の切れ間では無く、厚く重なる方を目指して歩け。
下を向き、「空は鈍色だ」などと思い込むな。雨の降る空は限りなく青く、雨粒はその青を鮮明に映し出す。眼鏡を脱ぎ捨て、肉眼で見ろ。本当は、赤い空から緑の雨が降っているかもしれないのだから。
雨粒が口に入ろうが、口に入ろうが、上を向いて歩け。
傘をささずに雨を歩くとき、一番最初に、耳で雨を感じる。
それは音では無く、耳に滴る雨粒で感じるのだ。耳は毛細血管が集中しているので、針で刺したとしても、痛みはあるが出血は比較的少ない。針で刺される痛みは身に余るほど受けている。耳に血が滴る感覚を雨で呼び起こせ。
雨にうたれて、体が冷えたのなら走り出せ。どうせ止まる事はできず、歩き続けることしかできない。