春雨
そもそも。
文章を書くのは好きだが、別に得意なわけではないのだ。
伏線回収がオシャレな長編を書けるわけでもないし、解像度の高いエッセイを書けるわけでもない。
キーボードを弾いただけみたいな散文しか書けない。
「続けるのも一つの才能」みたいないい言葉にまとめた人間もいるが間違いなくそいつは表面だけ優しい人間だ。そいつの根はどうしようもないやつだ。DVするタイプ。箸の持ち方はきっと汚いし、居酒屋の座敷に上がった時に靴を揃えないタイプ。
創作した人にはわかると思うんだけど。
書き続けた先にあるプロとアマチュアの壁みたいな。あれを無くしてくれ。
表現の工夫も研究も全く意味をなさない、決して触れることのできない表現をくれ。
自分の考えたことを文章にしたら、世界がひっくり返るような衝撃を受けるあれだ。
続ける才能なんていらない。
目の前の雨を現実以上に美しく文章にする才能をくれ。
細くて長い食べ物に最適な名前をつける才能をくれ。