4K映写機になりたかった
ふらっと夜の散歩をしながら歩いていた。
道端に植えられていた薄紫の花が目に止まった。
そういえばこういう色の花は、ばあちゃんが好きだったな。と思い出した。
もう叶えられない約束や、叶えられるはずだった約束を一緒に思い出す。
正直に言って、ばあちゃんの声がもう思い出せない。
結局お盆もお墓参りになんて行けないまま過ぎてしまって、9月に差し掛かろうとしている。一番好きな季節は意外とすぐに通り過ぎて、またその季節を迎えるための一年が始まる。
一定の方向に流れているのか、堂々巡りを続けているのか。
よくわからないまま時間が過ぎていく。
映画のように、繰り返し同じシーンを見たり、気に入ったチャプターに一瞬で戻ることもできない。
映像は記憶できても音声は記憶されていない出来損ないの映画ならそれも当然かもしれない。
全てを記憶していたかったな。辛いことをたくさん覚えていてしまっても、それを霞ませてしまうくらいの強くて素晴らしい明るい光景が今までの人生にはあったんだろうな。