淡い期待
よくわからない不安に襲われる
学校で授業を受けている時
友達と笑っている時
芥川龍之介が自殺した理由の
「僕の将来に対する唯ぼんやりとした不安」
に似たものかもしれない。
漠然とした未来に対する不安とでもいうべきなのか。
自分の人生の指針が立たない。
彼が僕の心を揺らしてからというもの、どういうわけかこの手の考え事が多くなった。
ただ一つ確かなことは、この間の彼の一件は僕と死の距離を近づけたということだ。
魅力的に映るわけでもなく、貧相に見えるわけでもなく。ただ「死」という存在がそこにいる。過不足無くそこにいる。
彼の存在は薄れるどころか日々僕の中で大きくなる。
日常と乖離する風呂場で毎日僕は彼に問う。
死に意味はあったのか?
60年後に死ぬならば、なぜ働くのか?
当たり前という言葉に流されすぎて、自分自身という1番の当たり前を見失ってしまうのではないか?
そんな事を考えながら僕は、バスタブに沈む。
僕をぬるい静寂が頭まで包む。水が揺れる音以外には何も聞こえない。
彼の声も聞こえない。
確証が無い未来
苦痛に見える未来
手放すことの出来ぬ安定
「自由な雲」
をモットーにした彼は死して尚、僕の心に雲をもたらす。
この雲は災害を起こす乱層雲なのか、
はたまた恵みの雨の積乱雲になるのか。
人生の選択肢は一つでは無い。
しかし無情にも結果は一つである。
心の奥からうっかり顔を出しそうな、彼の誘惑に「今日は負けなかった」という事実を積み上げながら、自分の雲を形作らなければ。
自分をアップデート出来なくなった先の死を恐れてはいけない。
緑の光に目が眩んでも。決して。