新幹線のエッセイ(行きの便)
iPhoneのロック画面は11時に差し掛かるところであった。
朝の6時に宮古を出発したのだから、そろそろ5時間が経つのか。
新幹線に乗ってからは1時間と少しだな。
平日の昼下がり、僕が新幹線に乗るのにはもちろん理由があった。
大学入試にAO入試を選んだ僕は、無事一次試験に合格し、二次試験の面接と小論文のために横浜に向かっている。
1週間前に新幹線のチケットを予約したのだが、あいにく、ちょうど良い時間の新幹線は既に埋まっており、朝早い便での出立となってしまった。しかしそのおかげで、12時には東京は上野駅に着くことができる。そこで僕は、早起きへのご褒美を自分自身にあげることにした。
ちょうど上野の森美術館でフェルメール展が開催されているのだ。ご存知の方もいるかと思うが、僕はフェルメールがとても好きだ。あの独特の青色と、それをより映えさせるハイライトの使い方の虜なのだ。学校を公欠している分、罪悪感を感じないわけでも無いが、なにせ産まれて始めてフェルメールを生で見れるのだ。気にしてなどいられまい。
いつもは時速7キロで歩いているだけの僕が、急に時速300キロの新幹線に乗ったのだ。平時の罪悪感も理性もついてこれまい。
自分と学校への言い訳を考えながら、通り過ぎそうになる車内販売にコーヒーを注文した。
カップと唇の絶妙な距離感を楽しみながら、座席前部の網ポケットの雑誌に手を伸ばす。
ゆっくりと、ただボンヤリと眺めると、「函館エッセイ」の文字が目についた。
そういえばだいぶエッセイなど書いていないような気がしてきた。
今日はもう3記事も書いたが、ここでもう1つ書くのも良い気がした僕はリュックサックから、つい10分前にしまったばかりのiPadを取り出した。
iPadのロック画面は11時半を指して、新幹線は大宮に停車した。
上野まであと30分ほどだろうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
気に入ったらTwitterのフォローとSubscribe やいいね👍よろしくお願いします。