カメレオンの抜け殻

1日1本だけ、読むと元気になったりならなかったりするブログを書いてます。

心臓

朝、暇なバイトの間に窓の外を眺めていた。午前4時の外は暗い。
低気圧によりもたらされている長い雨を見ていた。空を見た感じ、雲もだんだん薄くなってきているようで、あと1時間もすれば止むように感じられた。

 

天気が悪いと起こる頭痛を感じながらぼうっとしていると、後ろから男に声をかけられた。
聴き馴染みのない声で、急に下の名前を呼ばれた。少し驚いて振り返ると、母の友達で昔から知っている人だった。
「お久しぶりです。なんでこんなところにいるんですか?笑」
常套句で会話の切口を得ると、しばらくぶりの他人同士、他愛もない会話をしていた。

はやけに僕の体調や、母の体調に変わりがないかどうかを聞いてきた。

僕自身特に悪い状態から変わりもないし、母のことなど知る由もないので、とりあえず代わり映えないことを伝える。そのあとは、19年間生きてきたコミュニケーション能力に基づいて、彼に同じ質問を聞き返した。

 

「俺は病気だらけでもうダメだな。」と彼は言った。

 

別に今まで深く関わる間柄でもなかったし、これと言った共通の思い出があるわけでもない。
それでも僕は半分、同情に似た感情を持っていた。もう半分には暗い好奇心を持ち合わせていた。

自分より年上の、大人の本気の弱音というものを聴く機会などなかなか無い。
弱音というものは大抵、どうしようもないくらい抱えている間に大きくなってしまった感傷であるか、それを話すことによって別角度から感傷を得ようとしているものだ。誰かを変わり身とするか、自身の内側から吐瀉物のように迫り上がってきたものかの違いしかない。どちらにしろ気持ちが悪い。

聴くに、彼は心臓系の病を同時多発的に患っているらしかった。
確かに言われてみれば、気色は良く無いし、眼も飛び出ているようであった。

彼は、若い僕が羨ましいという話や、体には気をつけろよと言って別の場所へと行ってしまった。